特集
人の手でつくられたものには、なぜだかぬくもりがあります。
機械では決して作り出せない、
ひとつひとつ違うわずかなゆがみ。
そこから洩れるあたたかな光が、時の流れを忘れさせてくれるような気がします。
実は、これらは100%リサイクルされたガラス達です。
ガラスリサイクルの難しさ
「ガラス」と一言でいっても、その組成は目的によって、かなり違いがあります。普通のガラスは珪砂、ソーダ灰、石灰などを主成分としていますが、そこにアルミナや酸化鉛などの成分が様々な配合で混ぜられています。ビンのガラスもワインやビールなどの目的に応じたそれぞれの配合で作られているため、リサイクルされるときは、別々にする必要があります。というのも、実際にこれらをまぜこぜにして坩堝(るつぼ)で溶かすことはできても、出来上がった後に、成分の違いから亀裂が入ってしまうことがあるためです。
いままでビンのリサイクルガラスを建築に取り入れてきましたが、単一の種類のものだけを集めることがむずかしい面がありました。
現在の一般的なガラスのリサイクルは、割れても問題の起こりにくい、道路の路盤材などが主な用途となっています。けれども、それらのガラスは他の素材と混ぜ合わせられているため、もう再びガラスとしてよみがえることはありません。これでは本当の意味の「循環」にはならないという気がします。
灯りをふたたび灯りに
そんな疑問を抱き続けるうちに、ようやく私たちの考える「循環」をかなえてくれる人たちと出会いました。
その仕事をご紹介したいと思います。
まず、原料となるのは事務所や大きなスーパーなどで使われる長いサイズの蛍光灯の管です。これらは産業廃棄物として回収されてきます。集まった蛍光管は一本一本手作業で、汚れを拭きとってゆきます。油汚れや埃をきれいに拭きとることでリサイクルガラスの品質を保っているそうです。
次に蛍光灯の場合、中に0.3mgの水銀が含まれているため、これを機械で取り除きます。いままで蛍光灯のリサイクルを難しくしてきたのがこの水銀の存在でした。こうして、小さな破片(カレット)となったガラスはガラス職人さんたちのいる工房へと運ばれます。
ガラスの破片は高温に熱せられた「るつぼ」に入れられ、ガラス職人の手によって再び灯りとして、蘇ります。一般のガラス工房だと、「バージンカレット」といって、再生品でない新品のガラスの破片の入ったるつぼに、リサイクルガラスを混ぜることができないので、一旦、1000℃以上の釜を冷ましてから別のるつぼにリサイクルガラスのカレットを入れなおして、再び釜に火をいれるといった、手間とコストがかかります。
ここでは、扱う全ての製品がリサイクルガラスなので、こういった無駄がありません。
また蛍光管ガラスのメーカーが限られているため、その組成も均一性が高く、再生品とは思えないような、よいガラス製品が作れるそうです。
こうして様々な人の手によって生まれ変わったガラスの灯り。
蛍光灯から白熱灯に姿を変えても、以前にも増して私たちの空間に温かい光をもたらしてくれます。
現在、様々なもののリサイクルが求められています。けれど、ただ機械的に循環していくのでは、どこか味気ないと思いませんか?
人の手が入ることで、「いのち」を吹き込むことができれば、循環は「螺旋」を描いてもっとすばらしい「環」につながってゆく・・・そんな思いを持たせてくれるガラス達です。
照明器具についてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私たちの設計する住まいはほとんどが白熱灯を使っています。蛍光灯は明るくて長持ち=省エネというのは事実です。しかし、それ以上に人の体に様々な影響を与えることが懸念されているからです。
そのひとつが電磁波を作り出すということ。蛍光灯を電磁波測定器で測ると、点灯時には特に電磁波の数値が跳ね上がります。白熱灯ではこういったことは起こりません。「電磁波過敏症」の症状を訴える人たちの間では、冷蔵庫や洗濯機などの日用電化製品とともに、蛍光灯を避けた生活をせざるを得ないのが実情です。特に公共施設や大型店舗などで多用されているため、やむを得ずそこにいかなくてはならないときは、帽子の内側に電場を遮断するアルミ箔を張っているという方もいます。
脳の情報のやり取りや、体の細胞の栄養のやり取りが、イオンを介していることから、電磁波の影響を受けることが明らかになってきています。電磁波は目に見えないため、理解しにくい分野ですが、パソコン、携帯電話などに囲まれた現代の生活で、できる限りリスクを減らす暮し方が不可欠です。