電磁波に耐えられない人の増加

★電柱をなくし、電線が地中に埋められた街路で、その電磁波を感じて電線の埋められた歩道の上から車道に飛び出す。(40代女性)

★外出の時には帽子の中にアルミ箔を貼って出かける。電車に乗るときはモーターのない車両を選んで乗る。職場では頭の上の蛍光灯を消してもらっている。家では夜、電気のブレーカーを落とさないと眠れない。(60代男性)

★職場から見えるところにある電波塔からの電磁波がつらくて仕事にならない。(40代女性)

 

私達が出会った電磁波過敏症(Electromagnetic Sensitivity, ES)の人たちの日常です。

化学物質過敏症(CS)患者さんたちと関わり始めた10年程前にも、同時に電磁波に過敏だという人が稀にいました。けれどもここ1,2年は、CSと同時かすぐ後を追うように電磁波にも耐えられなくなったといって相談に来る人が目立って増えています。

ESの方の訴える代表的な症状は次のとおりです。

              手足がビリビリする、冷える           耳の後ろが熱い  めまいがする   

              頭痛        眠れない                    疲れがとれない                             動悸      

              息切れ(浅い、過呼吸)    うつ的傾向           物事に集中できない             

これらの症状は、個人差がありますが、いわゆる不定愁訴的なものが多く、ただし、電磁波の発生源を取り除くと、はっきりと改善されることが特徴の一つです。             

患者となった人たちは皆最近までは、普通に電気を使った生活をしていた人ばかりです。             

目に見えない電磁波。私達の回りでは、いったい何が起きているのでしょうか。

電磁波ってどんなもの?

電磁波は水の波紋のようなものと考えると想像しやすいかもしれません。

波が小刻みで多いほど高周波、ゆったりしていれば低周波。このほかにも波の揺れ幅や波の形でも分類されますが、電場と磁場という異なる要素がこの波を作り出しています。

現在一般的に話題になるのは、高圧線の付近で癌や白血病が多いなどの話や携帯電話やその基地局による健康への影響です。

ドイツに行ったときはこれを「electro smog(電磁波スモッグ)」と呼んでいました。

高周波は主に熱作用といって、電子レンジでの料理のように、脳の中のたんぱく質が熱によって悪影響を受けることが懸念されていますが、ESの方はすでにこのようなものは使っていないのに、電磁波を感じることが気になっていました。海外の研究によると、人の神経伝達をコントロールする重要な役割をしているカルシウムイオンが低周波によって誤った動きをすることによって、制御不能となることを示唆しています。(★1)

私達が出会うESの患者さんには高周波はもちろんのこと、こうした低周波を波として実際に体で感じるという方もいます。これによって体内のリズムが狂わされることになるならば、患者さんの訴える呼吸の乱れ、不眠、動悸も理屈に合っていることになるのでは、と考えさせられます。

現在、電磁波をどのくらい浴びると危険なのかという指針値については、各国分かれているのと、様々な研究データが否定や肯定を繰り返しているため、暫定的な数値と考えたほうがよさそうです。

水俣病や杉並病、アスベスト同様、国が危険を認める頃にはすでに取り返しが付かない被害が出ていたという過去の事実から考えても、予防原則に立った対策が必要と考えます。

(★1:電磁波の健康影響:ニール・チェリー博士著 中継塔問題を考える九州ネットワーク訳より) 

 

建物でできる電磁波対策

私達が実際に現場でやることのできる対策を挙げてみたいと思います。

まず、家の壁の中や天井にめぐらされている電気配線は、通常Fケーブルといいビニル被覆がされていますが、これを電磁波シールド電線にすることができます。

これは電線に、アルミや銅の薄い板を包帯のように巻きつけたもので、普通では手に入らないのでメーカーに直接発注しています。この方法は壁や天井の仕上げがない状態でやる必要があるため、新築向きの対策です。

リフォームの場合は、配線のある壁面や天井面にアルミの入った特殊な壁紙を貼り、ある程度の電場を反射することができます。これも日本にはないので、直接輸入しています。

ただし、これは磁場には効果がない方法。それでもESの方は体が楽になったといいます。

ほかには配線を集中させて電磁波を打ち消しあうという方法もあります。

日本ではこのほか、金属メッシュを挟み込んだシールドガラスやパーマロイと呼ばれる特殊合金、銅や純度の高い鉄、アルミなどをつかった工法などを使えば、完璧に近い電磁波シールドルームを作ることも可能です。ただし、これは医療施設や精密機械工場などで用いられている工法。重装備すぎて住宅には向きませんが、技術的には可能です。

 

一方で、最近「アースをとればすべて解決する」といったことを宣伝しているところもあり、

電磁波問題を一面的に捉え、安易に商品化する動きが出ていることがとても心配です。

アースは日本では電圧が欧州よりも低い100Vのため、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジを除いてはとくにコンセントがアースをとるような形になっていませんが、アースをとっている欧州で、ESで苦しむ人たちがいることも事実です。

私達がお会いしたドイツのルノー医師は、建物の床にコンクリートを打つときに使う鉄筋を井桁に組むと磁場を作ってしまうことを懸念し、放射線状に鉄筋を組んだ話をしてくれました。(日本では構造上の強度を確認すれば可能だが、通常行われないやり方)

音や光、振動を含む様々な周波数の電磁波が、生き物である私達に本当はどんな影響を及ぼしているのか、一歩先に体験しているESの患者さんたちの声を慎重に聴いていく必要がありそうです。

 

家庭で今日からできること

ちょっとしたことで電磁波を浴びる量を減らすこともできます。

1)            蛍光灯を白熱灯に切り替える。若しくは距離を離す。(2m)

    特に学習机の蛍光灯は子供の頭に非常に近く、危険。

2)            眠っているときの影響が最も大きいといわれています。寝室には家電がなくても、枕の位置は隣の部屋の電気製品や、エアコンの室外機と背中合わせになっていませんか? 携帯電話をオンにしたまま枕元においていませんか?

3)            使っていない電気製品はコンセントを抜きましょう。手元のスイッチをオフにしていても、コードから電場がでます。

4)            特に家事をしていて倦怠感、頭痛などを感じる人は電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、食器洗い乾燥機の位置を見てください。運転中は2m離れて使うこと。

    離れて使えない掃除機は、箒とちりとりに替えるのも一考です。

 

電磁波と生体の関係は未知のことが多い現在、私達が電磁波過敏症の人達と接する中で経験したことをお知らせしたいと思い取り上げてみました。各方面の皆様のご意見をいただければ幸いです。

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