特集

私もそろそろ
エコ洗濯!
レインファーム通信
2004年10月号
炭で洗濯

家の中で日々くりかえされること、掃除、洗濯、食事。

これを改善することで、シックハウスになる潜在的なリスクを減らすことができます。


今回は洗濯の方法を見直してみます。


ご近所の洗濯に苦しむ人々

シックハウスがマスコミで取りざたされてから、数年が経っています。ホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機化合物(VOC)の規制も法律で定まり、建材による健康被害への関心は、ここ数年で非常に高まったといえます。これ自体は悪いことではありませんが、私たちが接する患者さんたちは、もっと別のことでも苦しんでいるのが現状です。そのひとつにあげられるのが、近所の洗濯です。患者さんの多くは、「週末のお天気の日になると、近所中でお洗濯をするので、その洗剤の匂いが耐えられなくて、窓を開けることができない。」と訴えます。症状は、気持ち悪さ、吐き気、めまいなどのいわゆる「不定愁訴」から、重度の方は、神経系の伝達がうまく働かず、呼吸困難に陥るといった危険なケースもあります。

 

生活由来の化学物質汚染

 

メーカーの販売している「合成洗剤」に含まれる界面活性剤や香料などの化学物質が環境を破壊するということをご存知の方は多いと思います。けれども、これらの成分のいくつかが、私たちの呼吸する空気に混ざり、そのために日々息苦しい生活を強いられている人がいるということを知る人は、まだ少ないのではないでしょうか。シックハウスや化学物質過敏症、アレルギーの人にとってこれらの化学物質は、建材からだけではなく、むしろ生活用品からの「暴露」を避けることのほうが、難しいのです。

こうした人達のためだけではなく、日々それに暴露され続ける人は誰しも発症のリスクを自ら高めていることになります。これではいくら食べ物に気をつけていても、片手落ちということになりかねません。

「でも洗剤なしで洗うのは抵抗がある」という方に、お勧めの洗濯方法をいくつか。

 

炭と塩の洗濯

炭(備長炭のような硬いもの)に、かまぼこ板のような「浮き」をくっつけて、使い古しの靴下に詰め込み、洗濯水槽に浮かします。塩(できれば天然のもの)をスプーン1〜2杯程度いれ、あとは普通に洗濯機を回します。基本はこれだけ。干した後の洗濯物を嗅いでみると、洗剤との違いは歴然です。汗の匂いは消え、洗剤の独特なにおいもない爽快さを楽しめます。

この方法は、数年前に京都の「シャンプー、リンスを使わない美容院」の方に教えていただいたものです。それ以来、個人的には洗剤を一度も使ったことはなく、気持ちよく洗濯を続けています。靴下の汚れや部分汚れには、合成成分のない、純石鹸で手洗いしてから、炭と塩の洗濯をしています。洗濯機も汚れにくいので助かります。

ただし、ステンレス槽はさびを生じる可能性があるのでおすすめしません。

(詳しい方法はお店でイラスト入りコピーを差し上げます)

 

重曹

重曹メーカーによると、岩塩を水に溶かして、電気分解してつくった水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)に炭酸ガスを反応させて作られています。天然の重曹もありますが、若干値段が高めです。重曹に炭酸塩を合わせた「セスキ重曹」は、普通の重曹よりも洗浄力があるようです。

化学物質過敏症の方の中に、洗剤の代わりに重曹を使っている人たちがいます。弱アルカリ性で匂いがないのが特徴。重曹は、このほかに食器洗いや便器の掃除にも使える、万能選手です。

 

石鹸

香料が入っていないもの。

純石鹸でも原料が廃油だったりすると、油の匂いが残っていて、過敏症の方には使えませんが、良質の植物油からつくられているものの中には、患者さんでも使える製品があります。

お酢

柔軟剤は皮膚からの吸収を防ぐため、使わない。どうしてもふんわりさせたいときは、お酢をたらしてひと洗いするとリンス効果が出ます。

 

洗濯すると衣類にくっついてくるもの、なーんだ?

洗濯機の水槽に付着するカビは、黒カビです。これは、クラドスポリウムという種類のカビであることがほとんどで、アレルギーを引き起こす物質とされています。このカビのえさとなるのが、合成洗剤や石鹸に含まれる有機物です。過敏症の方が洗濯に良質な石鹸すら使えなくなるのは、もしかしたらこのカビの成分が洗濯物に付着することが影響している可能性もあるのかもしれません。

石鹸派の方は、エコロジカルな生活に関心の高い方が多いと思いますが、過敏症を予防するには、できるだけ少ない量で洗濯することをおすすめします。洗剤を多く使うほど、カビにえさをあたえていることになるからです。まず第一弾として、石鹸と重曹の組み合わせからはじめてみる、というのもおすすめします。

また、洗剤だけでなく、化粧品や整髪料にも多用されている、香料も避けておくべき物質です。天然香料は1000種程度ありますが、洗剤などに使われているのは、人工的に天然香料を真似てつくられた、合成香料です。この原料は、コールタールや石油で、現在約5000種類ほどあるようです。香料は、生活用品全般に使われる種類と、食品に混ぜられる種類とに大別され、合成香料が大半を占めているわけです。香りというのは、食べ物と違って、消化器官を経ずに、鼻を通じて直接脳内に影響を与える要因となるため、決して軽く考えるべきことではないと思います。

 

今回は建材だけではなく、暮らし方によって、体を傷つけていることがあることを知っていただきたく、洗濯を特集しました。本来は専門外の分野なのですが、シックハウスの方、化学物質過敏症の方、アレルギーの方と関わる中で、教えていただいたこと、調べたことを少しでも多くの方と考えられたらいいなあという思いがあります。勉強不足の点も多いかと思いますので、これを読まれたみなさんからのご意見などを伺えれば幸いです。