土間が何でできているかご存知でしょうか?昔の土間は近くの土に石灰とにがりを加えてタタキ締めたものでした。3つの材料を合わせたことから、「三和」とも呼ばれます。
地方によっては砂だったり、粘土だったり、その配合も硬さもばらばらです。
京都はさくさくとした砂を使う「深草」、尾張は「三州」、埼玉は「荒木田土」など、モルタルが多用される前までは、土を固める一番自然な方法でした。
今回は、「荒木田」と呼ばれる粘土に石灰は加えず、海の成分にがりを加え水で溶いただけのシンプルな土間づくりを行いました。
1)土をふるう
今回の荒木田土は、ぎゅっと握り締めると団子になるくらいのほどよい粘土質で、埼玉から運びました。
粘土の塊を鍬や鋤でつぶして、できるだけ細かくします。この土の色がそのまま土間のもつ色となります。よい砂質土の取れる京都などでは、もっと白っぽい色の土間になります。これぞ「地域色」!
2)にがりと砂、砂利を土に混ぜる
厚さ10cmのたたきを作るため、土のほかに砂と砂利も加えて容積の調整をします。荒木田土はバケツ3杯、砂2杯、砂利も適度に加えます。これに水とにがりの成分であるマグネシウムを2種類混ぜ合わせて練り上げます。
土の量に対して、今回は最小限と思われる量でどのくらい固まるのかを試みてみました。
マグネシウムについて
豆腐のにがりである塩化マグネシウム(MgCl2)と、空気中で焼成された酸化マグネシウム(MGo)を加えると塩基性塩化マグネシウムという非常に硬いものになる。もともと左官材料として、模造大理石などに利用されてきた歴史がある。ただ、鉄に対する腐食性が強いため鉄筋コンクリートのような使い方ができない。長い時間を経て風化し、自然に還る点でコンクリートよりもエコロジカルといえる。
3)土間をたたく
練りあがった土の空気を抜くように上から棒で突いて、密度を増してゆきます。空気の隙間が多いと固まったあと、表面が沈下して凸凹の床になってしまうからです。それが済むと、鏝(こて)で平らにならしてゆきます。ここから先はベテランの左官の出番です。鏝に当たる手の感覚で、隙間が開いているかわかるそうです。参加者も見とれる鏝さばき。時間を置いて2回ほど表面をなでて、土間の完成です。
2日後の写真が表紙の土間です。やわらかい土の風合いを残したいということで、今回のたたきはカチンカチンにしない配合にしました。にがりを増やすとモルタルにも負けない強度の土間になります。ただ、モルタルやコンクリートの土間には決してない、温かみある踏み心地は、子供のころ作った“泥団子”の感触そのものです。
感触だけではなく、土間の場合は少なくとも5cm以上の厚みを持つため、通常壁に塗る以上の湿度コントロールが期待できます。
土でたたきを作る意味
今は世界中でモルタルとコンクリートの建築が氾濫しています。もちろんこれらの原材料も自然の産物です。けれども現在の製品には「固まる時間を自由に調整したい」「軽量化」「均一に混ざる」などの要請にこたえるべく、減水剤、分散剤、流動化剤など多種にわたる添加剤が加えられ、まさに「化学製品」と化しています。どこでも均一な色、形、精度で仕上がる便利さで、圧倒的な普及をしてきました。その結果、どこへ行っても同じような鉄筋コンクリートの建物に都市が埋め尽くされています。土を使っていたころの建物は、地方によって赤土、黄土などの表情があり、町を「郷土色」が包み込んでいたのです。
また、鉄筋コンクリートの建物は磁場を形成し、これが私たちの体にどんな影響を及ぼしているか未知であること、また欧米ではコンクリートのラドンによる暴露の危険性についても述べられています。無理矢理に人間の都合に合わせて物を作ると、とんでもないしっぺ返しを受けるという警告かもしれません。
自然の材料を自然の摂理に合わせて使いこなす「技」を私たちはもう一度自分たちに呼び戻さなくてはならない気がしてなりません。
今回は土間づくり初体験の方も、左官職人も一体となって作業した充実の2日間でした。
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レインファームでは土壁、漆喰(白、黒、べんがら色など)などの中から、添加剤の入っていない、安全性の高い材料を選んで施工しています。
レインファーム取り扱い左官材料
貝灰しっくい 赤貝の殻をコークス焼きして(石油は使わない)、銀杏草(海草の一種)を煮溶かした糊と麻袋のリサイクル麻スサ(繊維を細かく切ったもの)を加えた漆喰。 そのまま白壁としたり、天然顔料で色をつけることもできます。
土佐しっくい 塩焼き消石灰と発酵させたわらスサを練り合わせて半年近く寝かした漆喰.。やさしい黄色い壁。
汚れてしまった昔の漆喰壁を補修したい・・・漆喰の性質上、固まっている漆喰の上に塗り重ねができないため、合成のペンキを塗ってしまうことも・・。
ブレーマー水性ナチュラルホワイト 白い自然塗料で、石灰、水にミルクカゼインや大豆油などの天然原料でできています。今の漆喰の上から塗れ、壁を壊したりせずにきれいに生まれ変わります。DIYにもお勧めです。
それはご飯を炊いたり、
漬物を漬けたりする生活の工房。
人が来れば気軽にお茶を一服、
そんなひとときが生活の中にありました。
内でも外でもない、ちょっと心地よい空間を
土とにがりでつくりました
(土間たたきのワークショップ 5月26,27日)